20200225

一月の俳句 短歌と短詩も

 

辞書めくる手つきだ どこかにあると信じる

しまわれて 風化するまで 待つ 記憶を

日に二度凪ぐ海の静けさ すべて過ぎた

藍欠いた虹をみる ここまでこれる?

少しずつ 注げば溢れない からだ

断片のままつなげてく 地図にない地名

母の固い結び目をほどく 開戦前夜

詩にすべて費やす越冬資金

履歴書に「愛」と書きたくて嘘をつく

繋がれてないだけで ほら こんなに自由

オルタナじゃノれない 柑橘剥く時の匂い

通過儀礼 通過してなお暗い筒

あたたかい雨 夕立の 美しいだけの記憶

結び目をほどく かたく縛るために

レモンだった頃の記憶で 乗り切る

人類の刑に処されて 常に黄昏

バーミヤンの桃 思い出さなくていいよ

穴だらけの生き物に吹く風もある

膜のような何かを 往き来して 徐々に 小さくなっていく僕

一滴の雨粒に似た心臓に触れ「ここにすべてはありません」

六人家族で 時計を一つしかもってないから 壊れてしまう

冬の朝 辞書【落鳥】に赤引いた 彼は失踪者と認められ

コンタクトレンズの渇れる手洗い場 裸眼がひとり教室にいる

見つめてた時間 代わりに写真撮る

夢でしかいけない場所 ユークリッド幾何学

もとからの孤独 言葉は誤読も愛す

不道徳ならば恋文破り捨てるわけにはいかないでしょう? 初夏

告解の赦しを真似るオウムさえ牧師になるさ、人が消えれば

待ち受けに 光 家族の写真燃やす

欲望のかたち 言葉ではない体

地図帳からソドムを探す子のまなこ