20190401
「一番好きな〇〇ってなに?」って聞かれた時のために(そしてその場の会話をスムーズに進めるために)答えをあらかじめ用意いることがある。
好きな映画ってなに? 『ファイト・クラブ』
好きな小説ってなに? 『納屋を焼く』
好きな音楽は? うーん、「LONELY NIGHT」かなあ
じゃあ、好きな短歌は? 「風。そしてあなたがねむる数万の夜へわたしはシーツをかける」
最近、短歌とか俳句をまたすこしずつ作っているんだけど、ああやっぱり僕は短文詩と呼べるようなものたちのことが本当に好きなんだなって思う。
文字それ自体が意味の棺ならば、棺を並べて作られた彼らは華やぐ葬列のようだと思う。そして、短文詩における句点や読点がなぜか墓標のように見えてならない。そういえば、僕がつくった最後の連作は「ここに全てはありません」だった。一滴の雨粒ににた心臓にふれ「ここに全てはありません」 今ではもういくつかしか思い出せない。
笹井宏之さんという佐賀出身の歌人がいるんだけれど、彼が26歳で亡くなるまでに作った歌をここ数年ずっと読んでいる。ほとんど天使的だ。
作品にムラはあるんだけれど歌に込められた彼の無邪気さや切実さが、透明な悲しみとなって立ち現れる瞬間が確かにある。詩が詩になる瞬間を目にできる。僕もそんなものを作れたらなと思う。
《風。~》の歌も笹井さんの歌。この歌自体が私たち読者へのシーツになっていることを彼は知っているだろうか。そのあまりにも途方もない行為の反復。
詩とは一体なんなんだろう?